僕が扉を開いたのは、ふたりがそこに降り立って間もなくのことだった。
まだ誰もいず、暗く。静寂だけが、いつものように響いていた。
[2007/1/10 新春歌姫絵巻
@渋谷O-EAST]
1. forest
2. Reborn
3. 夕立
4. あなたに逢えて
5. 幸せであるように
6. 満月
encore. 明日はくるから2007年の初挑戦。二人が選んだ舞台はここ、渋谷O-EAST。
DUOより、ずっと、ずっと広い。
リハーサルが終わる直前。あん朱の歌声と濱田の音たちが、今まで感じたことのない広さの世界を創り出している。
伝わってくるのは、少しの緊張と、新たな鼓動。
高いステージだ。
そこからは、何が見えるのか。そこから、何を魅せるのか。
共に舞台に立つアーティストたちが、己の世界観を存分に披露する。
「時間です」
空を仰ぎ、ゆっくりと深呼吸し、口元で静かに呟くあん朱。
舞台袖から、ただ、ステージを見つめる濱田。
arp第2章が、ここから始まる。
舞台をスモークが包み、forestが流れ始める。
広い会場を、あのいつもの空気が包んだ時、静かにピアノの音がなり始めた。
今まで聴いたことのない音。だけど、間違いなく何度も聴いた曲。
1曲目『Reborn』
声が、言葉が、よく聴こえる。
これほどまでに慟かされるか。と思わされる程に、体の奥まで響いてくる。
頭上からあん朱を照らす光が、どうしても、綺麗な。例えば、長い雨がやんだ後、黒い雲の切れ間から差すような光にしか見えない。
新たな一歩を踏み出したふたりの、誓いを聞いたような気がした。
言葉など、ただのツールであり、それ以上でもそれ以下でもない。
同じ言葉なら、誰が言っても耳では同じようにしか聴こえない。だから人は、そこに自分の想いを篭めるという作業をする。
例えば、自分の創り出した音にのせて。例えば、それを笑顔や涙、強さや弱さと共に。
2曲目『夕立』
arp最大のパートナー、チェロ百瀬。
彼女の奏でる弦の音は、いつもarpの世界を際立たせる。
そしてこの『夕立』、とにかく深く、その音が響く。
あん朱が叫ぶ想いを優しく包むように、守るように舞う音が、その先への道しるべのようにも聞こえるのである。
誰かを想う力は、自分に麻酔をかけるくらい、強いエネルギーを持つように思う。
大切な人を想い生まれてくる言葉には、決して目には映らぬ美しさがあるように思う。
『あなたに逢えて』 『幸せであるように』
「あなた」と「あの人」を想う気持ちが、強く、強く言葉に篭っている。
とても、強い力だ。
それは、もっとも正直な自分の感情だからなのかもしれない。
「2007年は、新しい曲を作る年にします。」
出逢ってきた人たちに、今よりもっとarpを知ってもらえるように。
そして、これからより多くの人たちと出逢うために。
最終曲『満月』
一年前、アンプラグドで披露したこの曲。だが、もうアンプラグドはできないかもしれない。
あん朱の声が届かなくなるくらい、ふたりが創り出す世界は大きくなった。
でも、大丈夫。
大きくなった世界の中でも、ふたりの想いはしっかりと響きわたり、確かに聞き手に届いていた。
偉い人の本よりも、恋人からの手紙。
相手を好きであれば、好きであるほど、言葉は自分の中に入ってくるもの。
arpは今年、どんな道を進み、どれくらいの人に受け入れてもらえるだろうか。
折り重なる言葉たちが、多くの人の力になれるように。
あそこから何が見えたかのは、敢えて聞かないでおいた。
text by Mura Jun
<< Vol.5 : ワンマンライブ Life Palette -羽化- |Vol.6 : 渋谷O-EAST PRESENTS 新春歌姫絵巻 | Vol.7 : Roland presents DESIGN NOTES SCALE.3 >>

