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アープは断然、ライブがいい。
Vol.12 :光のさすほうへ プロローグ〜53本の放射線〜

思っていたより、近い。というか、近すぎる。
普段は客席。その場所に演者三人を囲むように、
扇形に並べられた椅子。
その一番前に座って、これから始まる一日を想像してみた。

[2007/4/21 光のさすほうへ
プロローグ〜53本の放射線〜]

1. 桜 unplugged
2. 沈黙と青い空
3. 満月
4. お休みなさい
5. タイトル未発表
6. さよなら さよなら
7. まぶた
8. 風が吹いてた
9. 横顔
10. Reborn
11. 夕立
12. 金木犀
13. 光のさすほうへ
Encore1. everything is beautiful
Encore2. ウレシ泣キ

vol15_1.jpg

ステージと席の間には、段差もなければ、仕切りもない。
あん朱の立ち位置から一番前の席まで、大幅2歩もない。
濱田に到っては、隣には顔があるようなものだ。
そこに座る僕に、「うわっ近いよ、近い!」と、あん朱。
その笑顔からは、心の表情は読み取れず。
53人に囲まれた時、ふたりは何を感じ、何を思うのか。
まだ踏み入れたことのない世界への旅が始まった。

本番前の2時間は本当に早い。今日は、本当に早かった。
新たな試みをする下準備には、若干短いのかもしれない。
時は、限りある。人々を迎える前も、迎えた後も、それは変わらない。


vol15_2.jpg楽屋にて。
緊張感が伝わってくる。
ふたりだけでない、その場の全員から発せられているのだろうこの雰囲気が、
互いに相まってそれを高ぶらせている気がする。
防音壁を伝って聞こえる、微かな、でも確かに大きくなっていくざわめき。
放射線の受け手が揃ったことを伝えていた。

プロローグ。
これからの全てが、ここから始まる。

forest

その時を待ち侘びた人々を、この音が迎える。
森が全てを包み込む直前に、arpがその地に向かう。


同じ目線。同じ場所。同じ空気。
誰もが待っていた空間が、ここにある。


光を、放とう。


濱田の指から導かれるピアノの音。あん朱は、手に何も握ろうとしない。


1曲目『桜』


機械を通さない、音、声。
舞台の中央から、全ての人々へ向けて、それが放たれていく。
周りからでなく、正面から、それぞれの胸元へ音を届けていく。
まさに、放射線。
その心地よさといったら、ない。


かつて味わったことのない感覚に身を任せていると、

刺激的な弦の音がそこに新しい色を加える。

2曲目『沈黙と青い空』


その音に気分を高ぶらせたあん朱。しかし、クールにその場を決めて見せる。


薄暗い森の上に、静かに現れる満月。
今日の月は、いつもよりずっと明るく見えていた。


大きな拍手の後、心に溢れ出した想いを、あん朱が語りだした。


「みんなに会いたかった」


53枚のチケットは、即完売だった。
それを知らされた時から、きっと胸に抱いていた想が、全く飾りない、この言葉に篭められていた。
舞台上で見せる、いつものあん朱ではなかった。その想いが、痛いほど伝わってきた。


続いては、もうお馴染み、『お休みなさい』


薄暗さ、背景、全てを味方につけて、存分にミステリアスを表現すると、舞台は次に向けて、更に暗さを増す。


緊張感が、三人を襲う。


「TAKE1」と「TAKE2」が魅せる、人の葛藤。心の声。
まだ名前もないこの作品。見てもらわねば語れない。


今日の勝負どころを完璧に決めた濱田が、微笑みながらマイクを手元に引き寄せる。


「今までで、一番嬉しかった」
この近さと、暖かさが、彼にそう思わせたのだろう。
こうして、自分達に会いに来てくれる人と「会話」ができる。それが、嬉しいのだろう。
舞台上で見せる、いつもの濱田ではなかった。


「大きなピークが来ている」
その中で創られた数多の曲達。
ふたりが今日のために、その中から選んだ曲の名は、『さよなら さよなら』


ギターがリードし、人々の胸の奥への道を開く。
そこにあん朱の声が染み渡る。
切ない、切ない、失恋の歌。
うたい終わったあん朱のほっとした表情。とても、いい時間だった。


次に『まぶた』。そして、あん朱が『風が吹いてた』の弾き語りで大きく成長した姿を見せると、続いては『横顔』。


vol15_3.jpg今日、一番優しいピアノとギターの音が鳴ると、
あん朱は恋人を想う女性に変わる。
全身でその愛を表現する。
その顔が、よく見える。こんなにいい表情をしているとは思わなかった。


拍手がやみ、また新たな音が鳴り出すと、突然、会場の空気が揺れた。
『Reborn』を聞きながら、小さく頭を振る人、一緒に口ずさむ人。
この曲に強い想いがあるのは、ふたりだけではなかったようだ。


そしてまた、あん朱は表情を変える。チェロが鳴る、その音と共に。


突然降り出した夕立を、浴びた金木犀。
雨上がりのあの空気が、花の匂いをより深く漂わせていた。


「私たちの関係は、馴れ合いじゃない」


最後の曲を前に、あん朱が語る。


「恋愛と一緒で、私たちはお互いを高めあうためにいる。
だから、一生懸命歌うし、一生懸命魂を削って曲を書きたいと思う。」


音楽の世界は厳しい。だけど、僕は確信している。
このふたりの音は、これからもっと多くの人に聞かれていくはずと。
それは曲がいいとか、詞がいいとか、単にそれだけじゃなくて。
そこには、誰もが必ず求める想いがあるから。


「だから、共感したら、また会いにきてね」


最終曲『光のさすほうへ』


音、言葉、声。全てにしっかりと力を持つ曲になった。
その光が、全ての人々の目指す先を照らせるように。


「本当に嬉しかったね。」と話す、あん朱と濱田。
互いに「もっとやれた。」とは言うものの、表情はとても満足そうだった。


残念なお知らせだが、リリースは延期される。
だが、濱田が話していたように、最高の形で人々に届けるための決断。
決して、曲がないわけでも、出せなくなったわけでもないのでご安心を。
ふたりは、必ず新しいものを、持ってきます。


プロローグは終わり、物語は意外な一言から始まった。


「ワンマンライブ、やります。」


7月7日。大宮あん朱の誕生日に。


ふたりの用意する一行目は、どんな言葉ではじまるのか。
今から楽しみでならない。

text by Mura Jun



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